ある日の事でした。 肌寒く風の吹く、空が真っ赤に染まる時でした。 音が、止まったのです。 走る車も、 信号機も、 駅のアナウンスも、 音が、聞こえなくなったのです。 私は、 街の中が 静かになったのだと、思いました。 耳障りな機械の心音。 空を翔る鳥達は 電線でその体を休ませて、 嘴を交わす。 私には、 聞こえませんでした。 冷たい風の音も、 擦る木の葉の音も、 川のせせらぎも。 音が、止まったのです。 この世界から 音が、消えたのです。 私は、叫びました。 音の無い、声で。 誰かに、聞こえます様にと。 でも、誰も居なかった。 気が付けば 私は、 生まれたままの姿をした この世界に居たのです。 ただの、大地。 ただの、地球。 私。 私は、音の無いこの世界に 生きていると、言えるのでしょうか。 私は、 私は。